「あの会社のCM,どのくらい出てるんだ?」「あのウワサ,もうテレビで流れてるのか?」「あの人,最近テレビでどう言われてる?」――。
広告や宣伝,広報関係の職場なら,この類の質問が毎日繰り返されているはずだ。
「あ,確かに最近見た覚えがあるな…」と心に浮かんでも,質問された相手が得意先や厳しい上司だったら,いい加減に応じるわけにはいかない。回答そのものが重要なビジネス判断にかかわる場面だってある。
そこで,手立てを尽くして調べることになるが,これといった明確なデータにはなかなかたどりつかない。CMの放送履歴に関する情報などは確かに流通しているのだが,放送時点からデータがまとまるまでの時同が意外に長い。ニュースやバラエティ番組の内容が質問の対象だりたりすると,もっと厄介だ。「まだ分からないのか!」といらいらした催促にますます焦るハメに陥る。
そうした現場のニーズに応えるサービスを提供する会社として話題を呼んでいるのが,エム・データだ。
同社は,2006年1月の設立と社歴は浅いが,東京,大阪,名古屋のキー局を中心にテレビ放送を365日・24時間ウォッチ,放送内容を「放送時刻」「人物」[企業」「商品」「音楽」「事実関係」といった情報要素(メタ・データ)に分解してデータベース化しており,日本で唯一,テレビ放送を記録している会社という。
このデータベースを縦横に検索すれば,冒頭のような質問に対して,正確かつ詳細な答えを出すことができる。
しかも対応は早い。レギュラー出稿されているCMであれぱ,リアルタイムで記録が蓄積していくし,新作CMについても,リリースから6時間以内に「商品」「タレント」「楽曲」「秒数」「シチュエーション」などのメタ・データが整う。ニュース番組については,最短で放送2時間後には「番組名」「放送時刻」「事実関係」などの基礎情報がデータベースに入る。「テレビで紹介された飲食店」などについては, GPSによる位置情報も付加しているという。
さらに,ユーザーのニーズに応じて生のメタデータ記録を供給することもできるし,カスタムメイドで分析レポートを制作することもできる。CMやニュースについて常に基礎情報を収集したいニーズに応じるため,「CMデータリポート」や「日刊テレビニュース速報」といった定期刊行物も出版している。また,自分でメタデータを検索したいという顧客にはテレビ情報検索システム「META−TV」をオンラインで供給している。
メタデータは,単なる「放送の記録」を超えた新たな情報も生み出す。メタデータの分析からは,普通にテレビを視聴しているだけでは気づかない情報の変化の様相が見えてくるからだ。
例えば,2007年春に話題となった「ピリーズブートキャンプ」を率いるビリー・ブランクスの来日前後1カ月を分析した同社のリポートを見ると,ビリーの来日直前,来日直後,帰国直前の3つの時期に,テレビ露出時間がピークを描く様子が明確にわかる。 累積露出時間をグラフにして近似曲線を描くと,あたかも3段ロケットが加速するようにカープが急になっていく。狙った結果か偶然の所産かは関係者のみ知るところだが,起こった現象はメタデータによって歴然と裏づけられる。
こうした分析は,商品やタレントとその流行といったマーケティング的な側面だけでなく,「選挙」「事件」など社会的なムーブメントを伴う事象とテレピ放送を関連付けるときにも有効な手法と言えよう。企図せざるネガティブキャンペーンとなってしまう「企業事故・スキャンダル」のような場面でも危機管理のツールとして使えそうだ。
同社は,日本国内だけでなく,米・欧・アジアにまたがる,テレビ・メタデータの収集・提供ネットワークの構築を目指している。すでに,米ダウ・ジョーンズのオンラインニュースデータベース「ファクティバ」に,日本のテレビ・メタデータの供給を始めているし,カナダに本拠を置く国際メタデータ交換ベンチャーとも提携している。
メタデータとは,情報の情報,つまりデータのデータであり,実は,GoogleやYahoo!といったインターネット時代の花形企業の「情報検索」の核心はメタデータにある。フルデジタル化に手が届く所まで来たテレピ界は,いずれネットと不可分の領域に入るのは必然。同社のような企業の役割にますます注目が集まりそうだ。